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「トラベルメイト98」
  1. 【 航空券(1) 】

     航空券を購入する場合通常は旅行代理店で買うことになります。旅行代理店で買うのだから、旅行の商品を買っているように思ってしまいますが、実際は旅行商品を構成するパーツの一つを、単品購入してるにすぎません。もっとも、航空券は旅行商品の中で占める割合が金銭的にも機能的にも最重要なパーツであることは疑う余地はありません。

     旅行商品というのは、まあ一口で言ってしまえばパッケージ旅行のことです。国際航空券に相手国の国内便の手配や空港からホテルまでの車ガイド、食事、観光をセットしている商品です。ちょっと見には、ただたくさんのパーツを並べて袋に放り込んだようなイメージがありますが、実際はなかなか複雑で単品物とは全く別の商品と思っていただいた方がいいでしょう。

     たとえば、コンピューターと比較してみましょう。パッケージを、メーカー品のスイッチを入れたらすぐ使える既製品のコンピューターとします。個人旅行を、マニアの自作コンピューターとします。そうなると、航空券はCPUでしょうか。

     既製品のコンピューターは、いろいろな部品で組み立ててあり、まあ当然その部品間はケーブルがはいずり回り、そしてソフトがインストールされていて、ちゃんと動くように調整されています。

     決して、必要な部品を段ボールに放り込み、良く部品が混ざるように30分間ガシャガシャ揺すって、さらに各部品がなじむように1時間水平なところにおいておけば、部品同士が自動的に合体してコンピューターができあがるわけではありません。(ガンダムじゃないつーの!)

     旅行の商品も同じことで、航空券、ホテル、観光、食事、ガイド、現地国内の航空便とかバス鉄道便、を個別に手配して、後は日程表をワープロで書けばパッケージが自動的にできあがるわけではありません。確かにそれぞれの旅のパーツは一つ一つ名詞で表される物ですが、それぞれ中には人間の行為が含まれています、つまり動詞です。

     たとえば、航空券一つとっても航空券は一般名詞で、印刷された航空券は航空券以上の物でもないしそれ以下でもありません。ですが、それを発券するのは発券課の人、予約するのは予約課の人あるいは担当者、それを必要なところへ運ぶのは郵便局か宅急便屋さん。 出発当日航空券を搭乗券に代えてくれるのは、空港の係員、それ以降航空券を旅行中持つのは添乗員かガイド、あるいは本人自身、イメージとしては航空券にそれぞれ必要なときいろいろな手が生えてきて物事が動いていく感じです。

     すべての旅のパーツは物それ自身だけということはありません。必ずその時点で必要な担当者というのがいます。それらがスムーズにお互い動いていけるよう調整する作業が必ず必要です。その調整が一応すんだ物を旅行の商品というのです。(一応といったのは、調整が完璧に済んだと思っても日程が長くなればなるだけ、手配内容が複雑になればなるだけ、うまくいかないことが多くなるからです) 「複雑系」という考え方が最近言われるようになっていますが、全くパッケージ旅行は「複雑系」そのものです 。

     コンピューターの場合は、部品同士が勝手に合体を繰り返して、自分でソフトを調整して既製品のパソコンが一台できると思う人は一人もいないでしょう。(将来は解りませんよ、パーツが一種の意志を持ち出すことだってあるかもしれません)旅行の場合は、旅のパーツを抵当に寄せ集めたらパッケージが簡単にできあがってしまうと思ってやしませんか!皆さん!

     お客さんではなく、業界内部の人でもそう思ってる人がかなりいます。旅行業界の人であっても、パッケージの手配組上げをやったことのない人だって大勢いますから。 ましてや、旅のパーツにはほとんどその時点時点で担当者が必ずいますので、それぞれを完璧に手配すれば後の調整など大した手間ではないと思いがちです。業界の人間も、新入社員の頃は調整の怖さなどへとも思っていません。だって、それぞれの旅のパーツには担当者がいて、それぞれはちゃんとてはいしたしお互い確認も取ったわけですから。 ところが必ず数回は、年末年始のピークシーズンとか、日曜日の午前中、成田空港のチェックインカウンターからの電話で、髪が白くなるくらいの恐怖を味わってしまいます。

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