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「トラベルメイト98」
  1. 【 旅行商品の買い方(1)】

    旅行商品の買い方(1)

     さて次に格安航空券のルールから利用方法に入ろうと思ったのですが、その前に旅行商品の買い方をすこし話してみようと思います。私たちの最初の旅行入門の頃もっとも不安だったことは、旅行先のこともそうではありましたが、切符とかホテルの申し込みをどこでどういう風にすれば一番安くて満足できる結果になるかと言うことでした。当時は航空券の割引など全然ない頃ですから(たぶんあるところにはあったと思います、それなりの地位と情報を持てる人達の間では)選択肢がほとんどありませんでした。それでもどうすればいいかわかりません。

     私の場合海外旅行の第一歩は梅田の関西汽船の切符売り場から始まりました。インドに渡ろうと思ったのですが、直通の航空便の普通運賃を払えるだけのお金がありません。やりくりすれば何とかはあったのですが、滞在費がほとんど残りません。船はないかと探したのですが、日本からインドへ向かう客船など有りません。貨物船なら何便かあったのですが、5〜6社当たってみたところであきらめました。

     船会社は個人の乗客などほとんど扱っていませんでした。古い重々しいビルの一角に、磨りガラスのはまった入り口のドアがあり、そこを入っていくと白いカバー付きの応接セットがあり、決まってふわふわのクッションでした。あるいは、旅行には関係なさそうな貨物船のパンフレットがずらっと並んだ事務所で、個人の切符の案内パンフなど一枚もありません。本当に場違いな居心地の悪い所でした。

     どう探しても、直行の船便はなさそうです。その頃本屋に売ってた旅行記にはアメリカへ船で渡った話とか、飛び込みであちらこちら走り回った結果乗客としてはだめだったけど下働きとして乗せてもらえた話がよく載ってました。やっぱり期待するじゃないですか。船会社で話がうまくいかず帰ろうとすると、たまたま通りかかった別の部署の係員が「ちょっと」と呼び止める。「君インドに行きたいの、そうならたまたま1ヶ月後に出航するインド丸がボーイを捜してるよ」なんて話をです。有るはず有りませんでした!けっ! 先にお話しした「海外旅行研究会」で香港までなら船で行けるという情報を仕込みました。

    大阪/沖縄−−関西汽船 沖縄/台湾−−琉球海運 台湾/香港−−バターフィールド&スワイヤー、

    もう予算から言ってもこれしか有りません。それで関西汽船の切符売り場へ行ったのです。

     電話で関西汽船の場所を確認して淡路から阪急線で梅田に出ました。朝からちょっとそわそわしていました。服もニチイで買った綿パンでなく、淡路の商店街の専門店で買ったメーカー品の(ブランド品ではありませんよ、メーカ品ですメーカー)Gパンにサファリジャケットでした。海外旅行へ行く切符を今日買いに行くのですからいつもは、小汚い淡路の駅も朝日に輝いて見えました。通勤の電車を待つサラリーマンに「諸君毎日ご苦労さん、俺は今日はインド行きの切符を買いに行くんだぜ!」と呼びかけたくなりました。
     そう、漫画家、石井ひさいち書くところの「東淀川大学」の生活そのままの学生がたまたまインドへ行くことになった雰囲気でした。

     関西汽船の事務所でまず日程表をパフレット立てより抜き出します。本当は前もって電話したときにちゃんとメモを取ってはいましたがもう一度印刷物で確かめたかったのです。待合室のいすに座ってボールペンで日程表をなぞりながら一人でうなずいたり腕組みして考えるポーズをしたりしました。周りの人は皆せいぜい沖縄へ行く人です。渡航証明書かパスポートが必要な所ではありましたが外国ではありません。(沖縄は昔は沖縄渡航を申請して証明書をもらわないと行けない場所でした。)私はたぶんこの中で唯一外国へ行く予定の人です。このカウンターで船の切符を買った後、琉球海運とバターフィールド&スワイヤー社を回ればもう私は国際人です。

     カウンターでただ沖縄行きの切符を買うのはもったいないわけです。一言旅行相談めかして台湾と香港の話もしなければなりません。しかも嫌みに聞こえないように旅行相談に持っていかなければなりません。だって私この中で唯一の海外無銭旅行予定の人なんですから。うまく考えがまとまりません。気分があまり高揚しません。いったん近所の喫茶店で体制を立て直しです。

     一時間ほどコーヒーを飲みながら考えました。もうメモを取って日程もチェックしたはずの琉球海運とスワイヤー社にもう一度電話しました。嫌みにならないようさらっと電話したつもりです。

    「すんません琉球海運ですか、えーと、2月の沖縄から台湾の船の日程教えてもらえますか、え、港はキールンというとこですか、料金はなんぼでしょう。」さらにもう一度電話を切った後に電話

    「すんません、バターフィールド&スワイヤー、マッキンノン社ですか、(どうです、ややこしい名前も一気にいえるようになりました)キールンからHONGKONGまで船出てますよね、日程と料金を教えてもらえますか。ええ、沖縄からキールンまで回る船が3月1日に台湾に着きますから、それになるべく早く乗り継げる便有りません?学生であまり金ないもんですから。」

    調子が出てきました、このまま行けば関西汽船のカウンターでも大丈夫だ。喫茶店から一気に関西汽船まで駆け込みました、が10人ほどカウンターで切符を買う人が待ってます。

    20分ほど待たされました。
    20分の内に気分が国際人から東淀川区の住人にしぼんでしまいました。入り口のガラスドアーに、ナップサックを担いだやせた新しいGパン姿のちょっと猫背姿の学生が写っています。やっと自分の順番が来ました。

    私「エーと、沖縄まで2等和室2月20日発一枚、それと琉球海運に乗り継い
      で、キールンに行くのですが(うまいぞそれいけ)」


    係員「え、どこに行くんですって」

    私「キールンです。キールン、台湾の」

    係員「うちでは台湾まで売ってません。確か琉球海運さんです、そっちへ行ってく  ださい」

    私「はい、じゃあまず沖縄まで一枚」話は続きませんでした。

    ちょっと沖縄の話とか船の中の話、台湾の話もできたら聞きたかったのにそれで終わりです。

    番号札渡されて「この番号呼ばれたら船券を渡しますのでそれまであちらでお座
            りになってお待ちください」

    私「はい」情けねー、新国際人のデビューだったはずなのに。

     30歳以上の人はほとんど同じ様な体験をしています。ちょっと期待を込めて航空会社とか旅行会社に行ったのに、事務的な流れ作業で終わってしまって気分がブルーになってしまったことを。

    30以下の若い人はここまで旅行者デビューに期待をかけませんし、人によっては物心ついたときから夏休みとか春休みには家族でハワイ旅行をしていたので、学生になってからとか社会人になってからの初めての旅行も別に緊張しなかったよと言う人もいるでしょう。でも大部分の人は大なり小なり国内で最初に海外旅行の商品を申し込みに行くときは緊張します。

     次の項から旅行商品の買い方を、ちょっとの間だけお話しします。慣れた人にとっては大きなお世話でしょうが、この会議室旅行の入門編ですので基本に今一度返ってわかりやすく行きます。

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