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トラベルメイトリロとハズキの自転車旅行

  1. 【 リロとハズキのチャリトリップ(10) 】


     私達はゴアの生活がすっかり気に入ってしまい、もう少し滞在したいと思うようになった。「居心地のよさにまけてズルズル長居しているうちに、どこへもいかずに沈没してしまうぞ」ともうひとりの自分が警告する。しかし本当にそうだろうか。

     私は自分の心に正直に問いかけてみた。たしかに旅の予算があるかぎり、物質的にも時間にも枠があるのは事実だ。その枠のなかで、効率のよい旅をもとめるのは自然なことだ。しかし、町から町へ風のように駆け抜けて、違う景色の中に身を置くことが、必ずしも充実した旅になるとは思えない。地元の人と顔見知りになって初めて見えてくるものだってあるはずだ。

     私たちは自炊のできる宿を探して、民家を一軒づつあたってみることにした。このあたりは家族でやっている民宿や貸家はあっても、看板がでていないことが多い。

    「あれっ、アウグティンじゃない?ここがおうちだったの」 戸口から出てきたのは、私たちが滞在している宿のレストランでボーイをしている彼だった。客の少ない日に暇をもてあます彼にとって、私達は格好の話相手だ。

    「実は、自炊できる宿をさがしているんだ。外食ばかりじゃお金がかかるしね」

    「それだったら、この先のカルドッソの家がいいよ。値段は五〇ルピーくらいだ ったな」

     有力な情報を得た私達はさっそく様子をみにいった。カラングートのバス乗り場からヴァガのほうにヤシの林を入ったところにあるその家は、正面からみると一軒の民家にしかみえない。

    「いまはふさがってるけど、あさってからならOKだよ」

     奥からでてきた若い主人が私達を部屋に案内した。ダブルベットが二つおかれた広い部屋では、五、六人のインド人ファミリーがくつろいでいるところだった。ドアの外側には、三畳ほどの玄関がしつらえてあり、コンロを使うにはちょうどよさそうだ。

     部屋の広さは今いる所の三倍で、家賃は半分もしない。おまけにシャワーは温水がでる。なんでも聞いてみるものだ。

    「ここで魚を料理してもいいかい?」

    「いいとも、ノープロブレムだ」

     このあたりは、カトリックなので、食べ物に気を使う必要はない。私達は引っ越しの日を確認して、上機嫌でその場を立ち去った。

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