「旅行記」
トラベルメイト
監修・編集

リロとハツキの自転車旅行

 

VOL.16 インド

 

ハイウェイに再び合流したあと、カルワールまでの四〇キロは、空腹をかかえてひたすらアスファルトをにらんでペダルをふんだ。ようやく町に到着すると、私たちは宿探しを後回しにして、国道から一本入ったメインストリートの食堂にかけこんだ。メーターをみると八九キロをさしていた。ラマ岬経由は車が少なかったとはいえ、約二〇キロも余分に山坂道を走ったことになる。  

まずは乾いた喉を冷たいソーダ水で潤し、定食をかきこんだ。ゴアでは一二ルピーだったミールズも、ここでは八ルピーで三割安い。ごはんとカレーのおかずをおかわりして、最後にヨーグルトに砂糖をかけてデザートにした。(ターリーにつく ヨーグルトは、カレーに混ぜて食べる)食後に甘いミルクティをのむと、脳細胞がミルクティの糖分を吸収して生気を取り戻し、前向きな気持ちになっていくのがわかる。毎度のことながら、食前と食後のこの気分の落差には、我ながら驚かされる。  

今晩の宿を探しに、自転車にまたがり、通りをながした。町のメインストリートは、どこから湧いてくるのか、人の流れが尽きることがない。その中に観光客らしい人影はみあたらない。人通りは多いのだが、活気に溢れるといった感じとは違う。商店には、ゴアでみたような色彩がなく、砂ぼこりですすけた木造の建物には古い時の流れが染みついていた。一目見ていかがわしい感じのする店は酒場だった。男達は深いのれんをくぐり、店の奥で人目をさけるように背をまるめ、倍の値のつく ビールをのんでいる。  

ここはカルナタカ州。マーケットには、もはや、穀物や野菜しかみあたらない。西洋の文化が浸透したゴア州の景色を、カラーグラビアにたとえると、この街の景色は、モノクロのシンプルなイメージがある。この印象は、このあとマドラスにいたるまで強くなる事はあっても弱まることはなかった。ゴア州はインドの中でも異質な空間だった。  

カルワールの宿は、いくつかガイドにでていたので、その名前をたよりに看板をさがす。ガイドにのっていないような小さな街でも、HOTELやLODGE、ま たはTOULISTHOMEの看板をさがせばよい。見つけた宿が、どれくらいの値段かは、建物を見るとだいたいわかる。開口一番「ドゥユーハヴァルーム?」 (部屋ありますか?)の決まり文句で始め、あれば値段を聞き部屋を見せてもらう。 部屋を決めるためには、いくつかのポイントがある。  

まず最初に肝心なことは、扉の鍵をチェックすることだ。南京錠がついていればOKだが、ドアロックの場合は、どんなに部屋が気に入っても泊まれない。自分の南京錠を使わない限り、部屋においた荷物や自転車の保障はないと思ったほうがよい。部屋はツインかダブルで天井のファン、水シャワー、トイレが付き、部屋に自転車をおくスペースがあることが私達の条件だ。  

つぎに、ファンが正常に動くか必ずチェックする。これなしでは、洗濯物が乾かないし、夜暑くて眠れない。シャワーの水は、しばらく出して、ちゃんと排水するか確かめる。これだけのチェックをするのに三〇秒とかからない。部屋代は五〇から七〇ルピーが安宿の相場だ。インドでは物の値段が比較的はっきりしていて、客によって始終かわるものではない。よほどひどい観光地でないかぎり、外国人だからといってふっかけられることはない。(もっともバスで、有名観光地を渡り歩く場合は、ぼられることが多いと思う)値段をきいて決めてしまうも、他をあたるもその時の状況しだいだ。その部屋で一日の疲れを癒せるようであれば、他のホテルをあたる時間と労力を休養にあてたほうがよいと思う。

 

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