「旅行記」
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リロとハツキの自転車旅行

 

VOL.51 インド(49) IH94/03/07 マハーバリプラム

マハーバリプラムに行くのは、楽しみだった。テレビ番組やガイドブックの影響もある。もののあわれを感じさせる海岸寺院に、ひなびたビーチ。さぞや静かで、居心地の良い所だろうと思っていた。こんな私に現実を教えてくれたのは、オーロビルで会ったオーストリア人のサイクリスト。   

彼は、三年前(九一年)にもインドに来た、と言った。その時、何もないけれど、静かで平和なマハーバリプラムが気に入って、相当長居したと言う。あまり良い所だったので、また来ようと心に誓い、再び今年(九三年)やってきた。彼は、まず人が多くなっているのに驚かされ、海岸寺院へ続く道に、びっしりシーフードレストランとみやげ物屋ができていた事に驚かされ、物売りがしつこいのに驚かされ、あまりの変わりようにがっくりきて、オーロビルへと向かったそうだ。途中、オーロビルの手前でとんでもない道にはまったけれど、「こいつのおかげで、なんともなかった」と、MTBのフロントショックを指さして、にっこり笑った。   

彼とそんな話しをした翌日、私たちはマハーバリプラムへと向かった。オーロビルを出ると、果たしてすぐに、とんでもない道にさしかかった。建設中のハイウェイだ。大きな石ころまじりの土を盛り、ブルドーザーでならして、基礎を作ったつもりらしい。キャタピラのあとが、深々とくっきり残り、乾期の太陽がこれを日干しレンガのように固めてしまっている。全身でショックを吸収し、ガクガクになりながら、なんとかそこを切り抜けた。交通量が少なかったのが、唯一の救いだった。こんな道を走ったら、車だって痛むに決まっている。  

建設中のハイウェイを走る事は、度々あった。嫌だったのは、道の真ん中で火を焚き、コールタールを入れたドラム缶を熱している横を通る時。「何かの間違いでこのドラム缶が自分の方へ倒れてきたら?」と思うと、今考えてもぞっとする。こっちのそんな緊張をよそに、作業員たちは細い手足をむき出しにして、のんびり仕事をしている。  

九五年某社発行の有名ガイドブックは相変わらず、「時おり訪れる観光客の人影もまばらで、ベンガル湾を望む海辺にひっそりと置き忘れられたように残されている」とマハーバリプラムを紹介している。私が訪れた九四年三月、かの地は日中の暑くてどうにもならない時間帯以外、大勢のツーリストで賑わっていた。特に海岸寺院は、ひっきりなしに訪れる見学者で、ごった返していた。見学者のほとんどは、インド人。特に、学校の行事で来ている子供の達の姿が目につく。  

それでも私は、マハーバリプラムがいたく気に入ってしまった。この町には、たくさんの遺跡をかかえる、大きな岩の丘がある。この丘の上に立つと、マハーバリプラムの町が一望できる。ここで、日の出、日の入りを望むのだ。同じ目的で、ここまで登ってくる人も多い。一日のほんの一時、ここで太陽をみつめていると、こころの洗われる気分を味わえる。人々の集う岩肌は柔らかく、この丘の善意が感じられる。   

海岸寺院への参道は、どこかゴアのコルバビーチを想像させる。いずれ、外国人ツーリストが増えると、カラングートのように変わっていくのだろうか。

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