トラベルメイト Top page へ戻る

トラベルメイト片山くんが行く

<<前のページ  次のページ>>

  1. 【 片山くんが行く(30) 】

      二、三日は平穏無事に済みました。朝6時前にオーレさんちを出て歩いて出勤、10分後にホテル到着、その日の仕事にあわせて前掛けしたり、木靴はいたり、一時間ほどで朝御飯。 そのときフィンランド辺りからのかわいいネーチャンとダベリながら30分、飲み物のみ放題(北欧のこの手のレストラン全部がこんなに待遇がいいかというと、そうでもなかったです、これは後からわかったことなのですが、他は飲み物もグラス一杯だけ、パンも食べられる個数に制限があったりで、このホテルは待遇がよかったです)、本腰入れてお客さんの昼御飯が終わるまでがんばって昼食、昼食終わって少しすると朝の勤務は終わり。

     オスターポート駅前の立ちのみスタンドで、ビール引っかけて晩飯まで町をぶらぶら晩飯食った後はオーレさんちへ、そこで寝袋の中に潜り込んで雑談、そして次の朝。

     最初ろうそくだった照明もどういう訳か、2,3日後に電気が来ました。相も変わらず警察嫌いのオーレさんのおかげで、窓は光が漏れないようにカーテンと、段ボールとテープで目張りがしてあります。

     ある日、出かけてくるからなとドアを開けてこっちをのぞいたオーレ君を見てびっくりしました。薄化粧をしていたのです。イアリングかピアスもしていたように思います。

     当時の日本は今のように男が化粧したりメイクした時代ではありませんでした。せいぜい、グループサウンズのオックスの赤松愛がメイクしたかしないかで大騒ぎになった時代です。 ビートルズのように長髪にするのがホンの数年前には不良と言われたこともあったのです。(さすがに、70年過ぎると学生の間では反体制というか非体制というかのポーズ決めるのに長髪が流行ってました*この辺り「学生街の喫茶店」 ガロの歌にうたわれています。*)

     とっさに思いました。「げっ、こいつオカマだ」、2人とも顔が引きつりました。下を向きながら手だけを挙げて「ヤー」と言うのがやっとです。オーレ君は鼻歌うたいながら出ていきました。2人とも同時にお互いに話しかけました「どうする!」 何をどうするかって、私たち頭が大混乱していました。オーレ君そういえば仕草が少し女っぽいことは、女っぽかったです、ただで泊まれるというので気にもとめてはいなかったのですが、相手は体の大きい北欧人です。 私ら2人ちょっとの武道の経験があるとはいえ、寝込みをおそわれたらひとたまりもありません。

     それならここに泊まるようになってから3日は経ってますが、彼は私らにすり寄るでもなし、粘っこい視線を送るでもなし、淡々としたものです。普通より変わってると思えるのは、警察に異常に気を使っているということだけです。それなら、今のこの部屋の状況を見れば何となく納得できます。ちゃんと説明できる理由がありますから。

     出発前から、旅行記とか体験者の話で日本人の男は小柄で肌がきれいだからホモにねらわれやすいとさんざん聞かされていました。実際に似たような境遇に遭遇すると浮き足立ってしまいます。 今から考えるとバカみたいな話しだし、オーレ君に失礼な話なのですが当時はマジに二人して対策を考えてしまいました。

     私は空手のまねごとを少しやってましたから、目が覚めてさえいれば何とかはなる、それに護身用にヌンチャクをリュックに忍ばせていました。 河本は、剣道をやってましたが空手はやってません。棒一本さえあれば強力なパワーを持つのですが素手ではパワー少々と言うところです。彼は明日バイトが終わったら、手頃なパイプか棒きれを探してくることにしました。対策は一つ終わりました。

     後は彼が危険かどうかの判断です。何が危険なのか良くわかってないわけですけども、男がメイクしただけで私たちは危険を感じてしまいました。 日本でもその世界はあるわけですし、新宿にはそのてのお店がたくさんあったわけですがホンの近くの小田急沿線に住んでいても、別世界の普通の世界に住んでいたため免疫が一つもありません。

     電車とか新宿の駅ですれ違うことはあっても身近で話したりする対象ではなかったのです。コペンハーゲンでは、同じ屋根の下の隣部屋、しかも大家が。

<<前のページ  次のページ>>

↑ページ最上部