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トラベルメイト片山くんが行く

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  1. 【 片山くんが行く(54) 】

     仮にも武道家の端くれ私の不覚でありました。相手は女性、しかも酔っぱらってるし気分は悪くしてるようだけど怒ってはいませんでした。不用意に一歩踏み出したところに、ちょうど彼女も一歩踏み出しそうになって、彼女の判断が私よりコンマ001秒ほど速く、彼女は手のひらで私の肩を突いて体がぶつかるのを回避したのです。

     見事なカウンター攻撃でした。タイミングはピッタリでしたし、北欧の女性は体格が良い上に気が強いです。そのときは、彼女の「ナンダヨー」と言う気力にとばされたようなものです。

     すっかり私も河本も、菜に塩状態で、シュンとしてしまいました。でも口で負けたらもっと惨めです。

    「あなたと戦おうと思ってここに来たわけではない、うるさいのはあんたの方だ し、私は今日は眠りたいだけだ。無理なことは言ってない。なあ、あんたもそ う思うだろう。」

     呼びかける相手を代えました。さっきから女性の後ろでうろうろしていた、優しい青年に矛先代えました。

    「アーユー、オールライト」 さすがにやりすぎたと思ったのか彼女の方も声をかけてきます。でも今は彼女に意地でも答えたくありません。ちらっと彼女の方は見たのですが、それに答えず、青年にもう一度話しかけました。

    「な、無理なこと言ってないだろ、庭でなく家の中でパーティやってくれと頼んでんだよ。」

    無言で青年聞いてます。そして彼女の方に向いて話しかけました。もうこの頃になってくると私達もどうでもよくなってきました。さっきの一撃で怒りの感情がどこかにすっ飛んでしまったようで、もうベッドに入ったらすぐ眠れそうです。

    「じゃ、どうするかはあんた達が決めてくれ」捨てぜりふ残して、私と河本はイブ君ちの方へ体の向きを変えました。

    「アーユー、オールライト?」 彼女が手を差し出しながらもう一回聞いてきました。来た来たとは思ったのですが、ここでにっこり笑ったりすると私ら完全な負けです。

     左手でそれを制しながら、後ろも振り向かずどんどん歩いていきました。イブ君の家の敷地に入ったところでちらっと後ろを振り向くと、彼女周りの人と大げさなジェスチャーで話しながら家の中にはいるところでした。

     今回は、私の完全な気力負けでした。それにしてもデンマークの女性の強いこと。これだけ強いと負けてもあまり悔しくはありませんでした。

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