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田森くんは西へ Index page へ

vol.021 沖縄 (3)

 

2年前、私と八田はYHに泊まっていました。たまたま石垣港近くで昼飯を食べることになりこの親父の食堂に入ったのです。話をしてるうちに意気投合、家に泊まれとなったのです。

食堂は夜閉めてからは座敷の部分が二間あるので学生2人くらい十分眠れます。昼間は町をぶらぶらするか、食堂の片隅に座ってお茶でも飲んでればいいわけです。  

石垣島のあとは西表島に10日ほど行く予定で、そこから帰ったら飛行機で那 覇へ飛ぶ予定にしていました。たまたまこの食堂の親父さんどこかの旅行代理店の取り次ぎをしていて、近所の人が那覇への航空券とか船券を取りに来たりしていました。  

西表に行ってる間は飛行機便の予約再確認は出来ないわけですから、ここの親父さんに頼んでいくのがベストの方法だと思われました。2人とも航空券を彼に預けて西表島へ出発しました。ここでは軽い気持ちで始めたジャングル横断が大変な騒ぎを巻き起こしました。  

西表のジャングルは背の低い熱帯植物がずーと生えてる森です。ジャングルの外を走る道から見たらなんの変哲もない田舎の森がずーと続いているだけです。 しかしこのずーと生えてると言うのがくせ者でした。日の光は入って明るい森なのですが道がありません。  

道がやっとあったと思うと300mくらいで消えてます。位置確認に高い木にでも登ろうとしたのですが、高い上れそうな木は一つもありません。出発半日で方向感覚が鈍りました。北に向かってるのか南なのか東なのか西なのか全然解らなくなってきました。  

ここ西表島は沖縄の諸島には珍しく水の豊富な島です。そしてヒルも有名です。アマゾンの流域のように頭上の木から振ってくるようなことはありませんが、トレッキングシューズを履いていても、靴ひもの穴からヒルが進入してきます。こいつらは血を吸って初めは針よりちょっと太いくらいの大きさの物が、三色ボールペンの芯くらいの大きさになります。足がどうにもちかちかしてしょうがない ので、靴を脱ぐと、ボールペン状の奴らが数匹は食らいついていました。足は血で真っ赤になってます。手でひっぺがすのも気持ち悪いので、映画でよく見るようにたばこで一匹一匹焼き殺しました。  

一日で横断するつもりでしたから、食料も昼飯分にスナック程度しか持ちませんでした。暗くなってきたのですが森がとぎれそうな気配はありません。たまたま歩いてるうちに、偶然営林署の小さな小屋を見つけました。ここで一泊してから明るくなってまた歩く事にしました。食べ物はもうスナック菓子が少々と言うところで何もありません。幸い水だけは豊富でした。出発してから他の人とは午前中の早い時間に2人ずれの人と会ったきりです。  

地図を見ると営林署の小屋からは、出発地点までは小道が続いています。ただ地図上の距離はもう3分の2以上来ています。腹は空きすぎて感覚がなくなっています。今日と同じだけの距離を明日腹ぺこで歩けと言われたらまったく自信ありません。それに、石垣島への船は今から行こうとしている目的地からでます。地図の上ではもう70%以上の距離を終わっています。

次の日の朝、私と八田は、出発地点へ戻る林道ではなく、ジャングルに続く小道へ分け入りました。  
その日のうちには目的地へは着けませんでした。目的地に着いたのはその次の日の夕方でした。これも本当に偶然歩いていたらたまたまパイナップル畑にでただけの話で、このパイナップル畑はあと50m山へあがればそこからまたジャングルが始まっていました。  

山の、表面50mたぶん標高にしたら10mも違わない上を歩いていたら、パイナップル畑の先端のジャングルを5mくらいかすめてまだジャングルの中に戻っていたかも知れません。 そんな、こんなんで目的地の私らが泊まる予定の宿では大騒ぎになってました。