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トラベルメイトトラベルメイト95

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「トラベルメイト95」
  1. 【お.お.お客さん】

     一般的な商品の中で旅行を考えますと、少なくとも安いものの部類には入りません。最低でも三万円。最高になると上限はありません、まあ通常は十万円から三十万円くらいです。デパートの中の商品で考えても高額の部類には入ります。高額商品を購入するときはそれなりの扱いが期待されますし、そう扱われることが多いのです。慇懃、丁寧な言葉遣い、他の人より優先的な扱い、なにか少し問題があったときでも「お客さん、そうはいってもね.....」と言われることはほとんどなく「お客様、そうはおっしゃいましても...」といわれたいわけです。

     じゃあ二十五万円のヨーロッパ十日間の旅を申し込んだ人が下へも置かぬ扱いを受けるかというと今はそうでもありません。せいぜい大手の第一ブランドを銀座とか梅田の一等地に有る旅行会社のカウンターで申し込んだときだけです。最近では、旅行の中で高額商品といえるのは三十五万円あたりからで、どんなシーズンでも高額だといえる線は(旅行は出発日により大きく料金が変わってきます)、五十万円からです。これ以下のものをお申し込みの時は最低限のことは期待してもいいですが、しゃれた会話とか、遠回しな言い方、どんな注文を付けてもそれなりにやってもらえるなどと思わない方がいいみたいです。

     旅行業は典型的なサービス業です、サービス業というのはそれに見合う対価をもらってサービスをするのを商売にしています。ということは、無料ではサービスを受けられないと言うことを意味します。

     「二十万も払ったのだから、このぐらいはサービスしてよ」
    というのがお客さんの言い分。

     「二十万円もらったのだから、その分サービスします」
    というのが旅行会社の言い分です。

     旅行会社のサービスの対価がどのくらいかと言いますと、航空券のみの販売ですとだいたい3%−8%、キャンペーンを張るときには1%以下のときだってあり得ます。ホテルとか観光がついたパッケージの時で5%−10%、雑誌によくでるキャンペーンのハワイ6日間69800円などは粗利2000円の時だってあるわけです。

     例えば最近郊外によくできている、ディスカウントショップとか、アウトレット店でも最低でも7%通常は10%以上の粗利はあります。旅行の商品に関して通常で7%以下しかない粗利でどうしてやっていけるかというと、一個当たりの単価が最低でも、三万円通常で十万円くらいの金額だからです。

     一見高い商品、ただ平均で7%以下しかない格安航空券、キャンペーンのパッケージ旅行、旅行は通常の意味での高額商品ではありません。

     まして、初めての海外旅行で「今日の私はもう外人」と舞い上がったとしても、出発前の空港ロビーでガラスに映った姿は「昨日と同じ私」、自分のイメージにあった姿に近くなるには海外旅行の数を数えるのもめんどうな回数を体験してからです。それまではどの程度のことが苦情を言ってもいい限度なのかよくわからないためトラブルでないこともトラブルに見えてくることがあります。、

    ○疲れるお客さん1号

     少し長くなりますが、まったく絵に描いたようなトラブルを起こしてくれた人たちの話を聞いてください。事前の手配がが難しい地域ではこんなこともあります。

     申し込んできたのは、女性で四国の方でした。職業はライターらしく、あちこち飛び歩いているから、連絡は留守番電話かFAXでといわれていました。参加者はもう一人中部地方の技術者で、最初は男性の方にはほとんど連絡を取らなかったので名前だけこちらは知っていただけでした。出発日も迫り連絡することも多くなってきたので、緊急の連絡が取れないと困ると言うことで一応住所と電話番号を教えてもらいました。ただしよくあるパターンですが、会社にはなるべく旅行に行くことを知られたくないので緊急の場合でも個人名で連絡を取ってほしいと言うことでした。

     仮に男性を山本さん、女性を田森さんとしておきます。コースは、インド、パキスタン、ネパールの三カ国を2週間ほどで回るかなりハードなものでした。この地域はコミニケーションに難点があり、現地に到着してから航空券を手配したのではいろいろ間に合わないことが多いので日本で前もって予約を入れて現地の旅行代理店にて航空券をピックアップしてもらうことにしました。

     ただし日程がかなりきついので全部の区間が予約が取れるとは限らないことと、そうなったときには日程を変更するかあるいは目的地をもっと減らすかすることをアドバイスしました。

     手配を担当したのはどちらかといえば、お客さん言い分をじっくり聞く担当者の中田さんでした。手配はお客さんの希望を聞いてインドの*ランド屋*さんに流し、そこからインドへ連絡を流し、インド現地では飛行機の予約とかホテルの手配を流しその回答を待って、その結果を日本に連絡し、日本の事務所は中田氏に連絡するわけです。
     こういうまだるっこしい手続きを繰り返して、インドとかパキスタンの手配は進んでいくのです。

    *ランド屋*
    相手国のホテルとか観光、国内便などの手配代行を専門にしている会社

     時間がかかると言うことは最初に説明しておきました。男性の方は一回だけどネパールには行ったことがあるとおっしゃっていたので、現地と日本の通信事情があまりよくないことは最初の説明で理解していただいているものと思っていました。ところがどうもなんか違うのです。

     何カ所かの飛行機の予約の回答の中で、ある部分はとれてある部分は回答がこず、何カ所かは満席であるという回答がきました。こうなるとひたすら待つしか方法はないのですが、3日ほど経つともう電話がかかってきます。

    田森「連絡を待ってたのですが連絡こなっかたので電話しました、それでどうなったのでしょう」

    中田「インドから連絡ないので、お客さんにも連絡できなかったのです、新しい回答きたらお伝えしますのでもうちょっと待っていただけますか」

    田森「わかりました、必ず連絡ください。」
    また3日ほど経つと

    田森「連絡をいれてくださいと頼んでおいたのに、全然なかったですよどうなってるのですか、」

    中田「いかんせん、現地から連絡待ちなものですから、回答を早くするように連絡をいれてみますから」

    田森「何日発だったらとれるのですか」

    中田「それも、日本とコンピュターが直結しているわけではないので、アメリカのように、この事務所の端末で結果をみるわけにはいかないものですから」

    田森「こことここを、変更しますから頼みます。」

    中田「せっかくいまとれてる部分があるのですからそこを残しておいて、取れてないところを変更なさった方が。それと、日程はもっと単純にした方が取りやすいのですが」

    田森「返事が来てないのだったら、同じことでしょ。以前伝えた第二希望に変更してください変更しておいてください」
    しょうがないのでまた変更、結果を伝える。

    中田「変更しましたが、連絡は数日しないと日本に来ませんので」
    2、3日たって、今度は男性の方から電話

    山本「結果はどうなっていますか、いま会社なのですぐFAXください。」
     どうも女性の方も忙しいらしく、お互いの連絡がうまく取れていないみたい。
     中田さんもこのお客さんばかりに関わっているわけにはいかないので、ほかの途中で入ってきた仕事を一時間ほどでかたずけて、いままでの経過をFAX。
    三時間ほど経ったところでえらい怒りの電話が男性の方から

    山本「すぐFAXすると言うからFAXの前で待ってたけれど、送ってこないのでFAXの前を離れた時に、FAXが流れてきたじゃないですか、おかげで会社のものにばれてしまって大変ですよ、どうしてくれるのですか。」

    中田「会社に内緒だから連絡をするなとはおっしゃっていませんでしたが。」

    山本「FAXの前で今待っている、すぐ送ってくれと言ったじゃないか、」
     そんなこと言っても、すぐ送ってくれと言うときは忙しいから、あるいは今外出するからの意味が通常です、会社には内緒だから、本人がいるとき以外は連絡しないでくれと言う意味に取れと言う方が無理です。まあすぐ送らず一時間ほど経ってからFAXした方も悪いと言えば悪いので

    中田「すみません、今後は会社の方には連絡しませんので」

    山本「そうしてください」
     そうこうするうちに出発2週間前になりました、おおむね国際線と経由地のホテルの予約は取れ、残るのはジャイプールという観光地への往復の予約だけが残りました10日前になってやっと行きの予約はOK、しかし帰りの予約だけはどうしても取れません。

    中田「行きだけは取れましたが、帰りはどうしても取れません、どうしましょう」
     このころも相変わらず女の方の人への連絡が多く、男の方はFAX事件以来連絡がありません。

    田森「いつ取れますか」

    中田「ずっと現地でトライしてくれていますので、チャンスはあるとは思うのですが、OKではないので今確実なことはいえませんが」

    田森「2カ月前から申し込んでいるのに、まだ取れないのですか。」

    中田「途中2回ほど変更が入ったので実際は3週間前の予約なんですが」

    田森「変更したのはOK取ってくれなかったからでしょう、連絡もあまりこないし」

    中田「こればっかりは、現地からの連絡がこない限りどうもできないので、申し訳ないですけどうちの独断ではどうもできませんので、さてもう出発10日前ですのでジャイプール往復以外は、最終確認でいいですか」

    田森「良いですよ。他はOK取れてるんですから」

    中田「最終確認すると今後変更キャンセルはできなくなりますが」

    田森「良いですよ、ジャイプールについては返事がきたらすぐ電話くれますか。」
     で、インドへ連絡を取ってもらうがチャンスは良いがOKはまだとれないとのこと。
    インドの旅行手配会社のV社の坂本さん。

    坂本「ジャイプールの手配ももう待てないので、行きが取れないままでもこのまま手配を進めるか、他の手配を残したままジャイプールの手配だけをキャンセルするかどっちかにしてください」

     しょうがないのでそのままを、女性の方へ伝える

    中田「もう出発まで10日もないので手配をこのままにしておいて、最終的には現地確認するか、今ならキャンセルチャージはかからないので取れてない部分はキャンセルしてしまうかどっちかにするしか方法はありません。」

    田森「いつ取れるかわかりませんか」

    中田「今日OKの返事が来るか、出発前までこないのかどうもわかりませんので、すみませんがお客さんの判断になります、どうしましょう。たぶん後2日は時間がありますのでそれまでにご返事いただけますか」
     で2日後女性の方へ

    中田「どうしましょうか」

    田森「どうしましょうかって、ここまで待ってOKとれないなんて、だいたいあなたはなんでも回答が遅すぎますよ結局間に合わなくなったじゃないですか」

    中田「途中4ー5回変更はありましたし、インド方面はアメリカなどと違い回答が遅いので元々あまりきつい日程を組むと一カ所でも取れないと日程が狂うと説明してありますが」

    田森「私たちは素人ですよ、そんなことわかるはずがないでしょう。まして勝手にこっちで変更したのでなく、取れないから変更したじゃないですか、OK取れてたら変更していませんよ、あなたじゃダメなのでもっと上の人を出してください」

     と言うわけで、上司の池田さん登場です。

    池田「どうもご迷惑をかけてるようですみません、ただ中田君も決して何にもしてなかったわけではなく、何せインドからの回答がないためのことですのでその辺を理解願いたいのですが」

    田森「中田さんて何でもおそいですよ、山本さんの会社へも送っちゃいけないFAXを送ってトラブルになりましたし。とにかく今後池田さんが担当してください。」

    池田「途中で引き継ぎますとなにかと不都合が起こることがありますし、私もフォローしますが中田君も決して素人の新人と言うわけではありませんので申し訳ありませんが」
     てな訳で、2人がかりで担当することになってしまいました。

     出発4日前、インドの代理店坂本さん、
    「池田さん、もう限界ですよジャイプールの手配キャンセルするか、現地確認にするかどっちかにしてもらえませんか」

    池田「お客さんなかなか決めてくれないもんですから明日午前中には最終確認してもらいますから」

    坂本「たのんますよ」
     あちこち電話をかけまくってやっと田森さんをつかまえて

    池田「インドからまだOKの連絡は来ませんが、ジャイプールの手配どうするか今日中に山本さんと相談して決めてもらえませんか、ぎりぎりでも明日の午前中には結論を出さないとまずいものですから、もう一度確認しますが、2つの方法が採れます。一つは、ジャイプールの手配を全部落とす。この時は、当然キャンセルチャージは不要です。二つ目はこのまま出発して最終的には現地確認をする、この時は料金は日本で全額いただきます。もし現地でも取れなかったら現地ガイドの証明書をもらってきてください、その手配分は全額払い戻しいたします。ただし明日ジャイプールをトライするということで確認をもらいますと変更・キャンセルはきかなくなりますがよいですか」

    田森「わかりました山本と相談して連絡します」
     一時間もしないうち山本さんより電話あり

    山本「田森から訳の分からない電話があったけど、どういうことなの」
     今度電話を取ったのは中田さんでした
    中田「ジャイプールの手配が帰りの便は取れてるのですが、相変わらず行きの便の回答が来てないので、もう今日中にどうするか決定していただきたいのですが」

    山本「OKとれてないんだろう」

    中田「ええ全部は取れていません」

    山本「じゃ最終確認できないじゃない」

    中田「取れてない部分のみ、どうするかという決定してもらいたいのですが」

    山本「取ってよ、そうすりゃOKだすよ」

    中田「もう待つ時間がないです、手配をキャンセルするか、現地の確認にするかどちらかに決めてもらわないと困ります」

    山本「今更ごちゃごちゃ言い訳しないでよ、連絡は遅いし頼んだ通りにしてくれないからこうなったんでしょう」

     中田さん、手配旅行とは予約即OKではなく、取れないこともありそのときはできうる限りの努力はするけどもダメなときもあり、そのときはいろいろのデーターは伝えたりアドバイスはするけども最終決定はお客さん本人の意志である云々....。を伝えてなお同じことは最初から申し込んでもらったときから説明していることも伝えたのですが、よくわかってくれたかどうか、とにかく明日連絡をもらうことでいったん電話を切りました。で最終日田森さんから電話あり。

    田森「結局取れませんか」

    池田「連絡来てません、どうしますか。」
     昨日と同じく、選択の余地は2つありどっちを取るかということを説明。

    田森「しょうがないですね、ジャイプールの手配頼みます」

    池田「山本さんへも伝えておいてください」
     で出発当日、空港より山本氏の怒りの電話あり

    山本「ジャイプールの手配どうなった」

    池田「きのう田森さんと話をしたのですが、最終的に現地確認と言うことで」

    山本「取れてないんだったら、ジャイプールへはもう行かないからキャンセルしてよ」

    池田「昨日キャンセルはもうないと言うことで連絡をもう流しましたので、今からじゃあもう無理です。現地でガイドに確認を取ってもらって、そのときも取れてなければ。その手配分はおかえししますから、もう一度インドでトライしてください。」

    山本「取れてないものにお金を払うのかよ。」

    池田「昨日田森さんと確認を取って、ウエイティングのままでもこのまま出発して現地で確認後どうするかガイドと相談すると言うことで決めてもらいましたが」

    山本「あんたの所返事が遅いよ、だからこんなことになるんだよ、田森に色々聞いたけどよくわかんないこと言ってたよ。全部取れたのかよ。中田さんがちゃんとしてないからだろ」

    池田「昨日の時点で田森さんにちゃんと説明して、今キャンセルするなら料金はかからないし、もっとトライするならキャンセル変更はいっさいできませんと言うことを納得してもらってますが、田森さんから同じことをお聞きになったでしょう、私も説明しましたし中田も10日ほど前より同じことを繰り返しお伝えしてますが」

    山本「OK取れてないのならジャイプールの手配は今キャンセルしてよ」

    池田「今更できません、昨日確認したときキャンセルと言っていただければ問題は全然なかったのですが」

    山本「足下みるなよな、行きたいところが取れてないのに、キャンセルするかこのまま続行するかと言われれば、キャンセルしないでそのまま続けてくださいと言うしかないじゃないの、田森は悪くないよ」

    池田「それはお客さんの選択です、行きたいところが取れてないならその時点でどうするか決めてもらいます。私どももお受けしたもの100%が取れるわけではありませんので、取れないこともあり得ることはもう何回もお伝えしてありますが。まして昨日OKは取れてないがこのままトライを続けて現地で確認すると、田森さんがお決めになりましたが、ですからもうキャンセルはできません」

    山本「あのねー、お宅の中田さんが何でも遅いからこうなったんでしょ、あんたに代わってからは少しよくなったとはいえ、返事が遅すぎるからだよ。中田は精いっぱいやっていたとか、中田がどう言ったかは今ここにいませんからわかりませんとか言うのはよいけども、部下のやったことは全部上司の責任だろ。ジャイプールの手配が全部OKなら今手配頼むよ、そうじゃなきゃキャンセルしてよ」

    池田「その話は、田森さんと昨日もう終わっています、ジャイプールに行をキャンセルなさっても料金はかかりますから。田森さん近くにおられますか、おられましたら電話を代わって欲しいのですが、昨日確認を取ったことについてお話がしたいのですが。」

    山本「田森は確認何かしていないと言っている、まとにかく手配キャンセルしておいて」
     ガシャ! ここで電話は切れました
     何かトラブルが続くような悪い予感がしました。
     彼らが出発してから1カ月ほどすぎました。そろそろ山本・田森さん達の名前の記憶も薄れかけた頃、山本さんより電話(そういえば彼ら日程は12日間だったのでもう日本へ帰っているときです)。旅行費用は、ジャイプールの手配分はもらってないのですが他の手配の部分で変更で安くなったところもあったのでプラスマイナスゼロかな、という位でそろそろ清算せねばと思っているときでした。

    山本「インド国内の手配したV社、あそこは詐欺みたいな所だよ。日本に連絡事務所があるよねそこの電話番号を教えて」

    池田「どうなさったんですか」

    山本「どうもこうもないよ、向こうで買った荷物送ってくれると言ったのにもう20日以上たつのに何の連絡もない。」

    池田「荷物と言いますと、ガイドが連れていってくれたおみやげ物屋かなにかでお買い求めになったものがまだ届かないのでしょうか。」

    山本「いや主にパキスタンで買った絨毯なんかです。デリーの空港で預かって後で送ってあげますからと言うんで預けたのに、まだ何の連絡もない。」

    池田「帰国の時のデリーの空港でですか? 確か帰国の時のガイドはホテルから空港までの見送りだけのガイドですよね、それとも日程変更なさって帰国前日にデリー市内の観光を追加なさったんですか。」

    山本「変更してないよ、荷物もって帰ろうと思ったんだけども後から送った方が安いからと言われておいてきたんだよ。」

    池田「通常別便で荷物を前もって送るのをアナカンと言って、かなり安いのですが、それにしても自分がお連れした店の品物でもないのにガイドが空港で預かると言ったのですか。」

    山本「ああ、そのときはえらい親切なガイドさんだと思っていたけどね。」

    池田「いずれにせよ、現地に確認をしてみますので2ー3日待ってもらえますか、それと日本に連絡先があるところですが、お客さん直接の扱いはしてないところですのでうちを通して連絡取りますから、電話番号はお教えできませんので申し訳ないのですが。」

     どう考えてもおかしいケースです。帰国するお客さんを、ホテルから空港まで送るだけのガイドが親切心で空港で荷物を預かるなどと言うことは通常あり得ません。空港で荷物を預かったとしたら彼はその荷物をすぐ別便で日本へ送ることなどできません。いったん市内まで荷物を持って帰るか、あるいは空港の荷物預けに一時保管して、それから輸出の通関手続きをしなければなりませんし、品物によっては税金を払わないと送れないケースだってあります。

     即坂本さん所へ電話、実際はどうなっているのか確認してくれるよう連絡。2日後に連絡がありました。

    坂本「お客さん嘘言ってるよ、ガイドが言うには、帰国当日空港に行ったら荷物が多すぎて荷物の超過料金がかなりのものになったので、交渉して少しはまけてもらったんだけど、どうしてもかなりの金額を払わないといけなくなっって、それで帰国前なんでお金の持ち合わせがなく、しかたなくガイドに頼んで後で送ってもらうことになったみたいです。」
    それならつじつまが合います。すぐ山本さんに電話。

    池田「現地から連絡が来ましたが、山本さんがおっしゃっていることとはかなり状況が違うみたいです、超過手荷物のため荷物を一緒に持ち帰れなくて、デリーの空港でガイドがやむなく預かったように聞きましたが。」

    山本「そうだったんだけど、ガイドは簡単に後から送れるように言うもんで、預けてきたんだ。」
     そんなこと現地ガイドが言うはずはないですけども、あんたそれは嘘ですとも言うわけに行かないので、

    池田「そうですか、ですが荷物だけを後から送るには輸出の手続きをしなければなりませんのでかなり時間と費用がかかりますよ。2−3週間じゃ無理だと思いますが、下手すると2カ月以上かかると思いますが」

    山本「そりゃ困る、お宅で何とかしてよ。」

    池田「うちが請け負った部分で、たとえばガイドが連れていったおみやげ物屋で購入なさったものが届かないなどと言うときは、問い合わせはうちでやらせてもらいますが、今回のように当方も現地も関係ないところでのことは、お客さん本人が処理していただくことになります。」

    山本「じゃあ、インドの会社の日本の代理店の電話番号を教えてよ。直接交渉するから。」

    池田「残念ながらお教えできません。うちを通しての手配ですから日本ではうちを通してもらいますが、今回は当方の手配での中ではないところでの話なので、現地連絡先の電話番号をお持ちなら直接かけてください、それと荷物を送ることに関しては当方もお客さんと同じく素人ですからご自分でおやりになった方が早いですよ。」

    2〜3日後坂本さんより電話あり。「池田さん、あのお客さん勘弁してくださいよ、荷物が直ぐ着かないなら訴えるという風なことをインドへの電話でおっしゃっているみたいですが、こちらも出発の空港で、べそをかいて困ってらっしゃるから荷物を預かっただけで、文句を言われる筋合いでもないし、荷物を送らなきゃいけない義務もないんですがね。」

    池田「そうですね、ほっといても良いのですが、まあ最後の忠告と言うことでもう一回だけ連絡しておきますよ。」
    しょうがないのでもう一回限りと言うことで連絡をしてみる。

    池田「山本さんインドへの電話でかなりの苦情をおっしゃったみたいですが、うちも先方もこの件に関してはなんらの責任も、義務もないですよ。全部このトラブルはお客さんが起こしたことなので自分で処理するのが本当でしょう。現地は好意でやってくれてることなので文句を言うのは筋違いだと思いますが。」

    山本「恩着せがましいこと言わないでくださいよ、現地の処理が遅いのは確かですから苦情を言ってるだけですよ、だいたいこう言うときだけ高飛車にでないでよ。ジャイプールも結局取れないみたいだから現地でキャンセルしたよ。キャンセルチャージがいるとかなんとかガイドが言ってたけど出発前に空港でもう予約を落としておいてくれと伝えてあるから、そっちで処理しておいてよ」

    池田「出発前から何度もお伝えしているように、田森さんから最終確認を取った後のキャンセルですから、当然料金はかかります。利用なさらなかった手配の内払い戻しできる部分もありますから、キャンセルチャージと払い戻しを相殺させていただき、余るようでしたらお支払いしますし足らないようでしたら、集金させていただきます。荷物の件は、当方ではどうもできませんので直接インドとやりとりしてください。」

    山本「ちゃんとした手配もしないで、取れてない手配のキャンセルチャージを払えだと。こっちが困ってるときは、私どもで手配してないから関係ないだと、いい加減にしろよ、今まで言わなかったんだけど、ネパールのカトマンズからデリーへ行く飛行機も最初の案内の時間で合ってたじゃないか、後で教えてもらった時間に空港へ行ったらもう飛行機かでてしまった後なんだぞこんなのもおまえ所のミスでそうなったんだから責任をとってもらうぞ、どうしてくれるんだよ。」
     まあ後から続々と文句がでてきますが、時間が変わって乗れなかったなどと言うのは初耳です。

    池田「はじめ朝10時に出発と言うことで案内しましたね。次にネパール航空から出発時間が13時30分になったと連絡があってその通りにお伝えしました。切符にも出発時間が13時30分になっています、それがまた10時になったんですか。」

    山本「そうだよ、だから乗れるはずがないじゃないか。たまたまネパールは2回目だったんでタイ航空に知り合いがいて、そっちに頼んで同じ日にデリーへ飛べたけど、最初だったらこんなことできなかったぞ。使わなかったロイヤルネパールの部分は払い戻しをしてもらうぞ。」

    池田「そういう事情ならネパール航空も払い戻ししてくれると思いますんで、確認を取ってみます」

    山本「いいか、あんたん所運がいいよ、ここん所一つとっても慣れてないお客なら大変なことになってたんだよ、こっちもそれなりにやってるんだからお宅も荷物のこと手伝ってくれてもよいんじゃない、現地が大変なことはあんたも知ってるでしょう、池田さんインドへは何回行ったことあるの」

    池田「あんまり数えたことはありませんけど、40回は越えてると思いますが」

    山本「えっ」

    池田「40回は越えてると思いますが」

    山本「............、ナラあんたもわかると思いますが、現地の旅行が大変なことは」

    池田「ですから旅程をもっと簡単にとか、今からだと変更しない方がとアドバイスを続けたのですが、山本さんの方でお聞きにならなかったじゃないですか。それにネパール航空もご自分で航空会社に電話して予約再確認なさったわけでしょう。そのとき出発時間の確認をしなかったのですか」

    山本「したんだけども、航空会社の方で教えてくらなかった。」

    池田「その際は、当方ではどうしようもありません、今回手配旅行なので予約の再確認を含めてお客さんの方でやってもらわないと。このことと、ご自分が買い求めた荷物の超過手荷物料金が払えなくて何の責任も義務もないガイドに預けて帰国して、その手配が遅い、荷物を送る気がないんじゃないか詐欺だ訴えるぞと言うことに何の関連もありませんが、とにかく人間の移動を手配することは、日頃慣れてますしそれが商売ですから何とかすることもできるでしょうが、荷物を送ることは専門外ですし当初から私どもが請け負った仕事ではありません。」

    山本「自分に都合に良いことばかり言うなよ、インドへ連絡くらい取ってくれてもよいじゃないか」

    池田「私どもの専門外のことですからできません、何ならエアカーゴ専門の所を紹介しましょうか、手数料が必要になると思いますが連絡してみますか?」

    山本「お金がかかるなら良いよ、それにしてもサービスが悪いよ、おまえの所は何でも頼まれてないとか、確認を取ったとか言い訳ばっかりだ、たまには今回は私どもの所で持ちますくらい言ってみろ、この野郎」

     日頃温厚な池田さんもとうとうぷっつん、20分以上電話で喧嘩になってしまいました、結局らちがあかないので、池田さん今後は一切電話では応対しない、手紙にして連絡するからそちらも反論あるなら文書でくれと伝えて電話を切りました。

     結局、清算は未使用分の切符とか手配の払い戻しと、ジャイプールのキャンセルチャージ、未収分の相殺で一人1500円の集金が、必要になりました。請求書を説明とともに送ったのですが、結局なしのつぶてで一切連絡がなくなったそうです。
     荷物もすったもんだしたのですが、かなりの郵送料金と通信費を払って40日目くらいには日本に到着したようです。

     このトラブルのケースの原因は、山本・田森さんの思い違いが一番大きいのです。まず旅行の商品は高額のため、世間一般の高額商品のサービスが受けれると思いこんだ所にあります。

     このケースでは,航空券が17万円前後、インド、パキスタン、ネパールの現地手配料金が15万円前後、合計で32万くらいでした。これを手配して旅行会社にはどれくらい入るかというと、せいぜい3万円、多くて4万円と言うところです。

     この料金内でできることと言えば、日程をつくりインド側と相談をして現地からの連絡を待ち、お客さんにそのまま伝え、変更があればまた伝える、そして出発日との兼ね合いで取れたところはお客さんと相談して最終確認を出していき、取れてないところはキャンセルしてしまうか、現地おまかせの最終確認にするか決めて行くわけです。この部分を彼らはもっと早く、頼んだ通りに結果を出せと要求しているわけですが、はっきり言ってそんなことはできません。

     40人のグループなら毎日インドへ電話して回答を要求することもできたでしょうが、2人きりの手配でそこまではできません、費用がいくらかかっても良いことが前提ならば、もっと早くほぼ要求に近い手配も可能だったでしょうが、まず山本さんも田森さんもこれだけ通信費に必要だと見積もりを出しても、納得はしなかったでしょう。

     「お金のことばっかりいって、たまにはサービスしてよ」

    「連絡取るくらい簡単でしょ。それがあんたの仕事なんだから」

    「あんたの所はサービス業でしょ、気分良く出発できるようにするのが仕事でしょ。予約取れないなら取るようにしてよ」

     そうです、旅行業者は色々な予約などのサービスをそれに見合う対価をもらって手配するのが仕事です。対価以上のサービスはできませんし、サービスはタダではありませんし、いくら気分良く旅行してもらうことが仕事とはいえ、すべての旅行中に起こったことに責任をとるわけではありません。よほどの明確な手配ミスでもない限り旅行会社の責任ではありません、むしろお客さん自身で旅行をコントロールして行かねばならないことが多いのです。

     山本さん田森さんとも、旅行に高い金を払っているのだから、32万円分のサービスを要求していますが、旅行会社は自分の取り分の3万円のサービスしかできないのです。

    ○ 困ったゴールドカードの君の場合

     たまに旅行費用をカードで清算したいという人が来ます。旅行の費用というのは10%以下の粗利しかないことが多いので通常カード会社に払う手数料はそのまま上乗せになることが多いのですが(つまりカード会社に払う手数料分だけ料金が上がると言うことです)、それでもカード清算でしたいという人がいます。

     ロンドン往復の人でした、誰かの紹介できたのか宣伝をどっかでみてから来たのか定かではないのですが、えらく落ちつきのない人でした。かりに双葉さんとでもしておきますか。

    双葉「ロンドン往復アエロフロートで、6月5日発で帰りは28日で予約してください、人数は2人」
     係員山田さん、航空会社に連絡。行きは空席があるが帰国便は現在満席。だが、30日なら取れるとの回答を得る。

    山田「双葉さん、行きはいいのですが、帰国便は28日に関しては満席です。いったん今あいてる30日の席でOKをもらっておいて、28日を第一希望として予約しておきます、28日が取れ次第そちらに予約を変更しますが最終的に取れない時は30日出発と言うことでかまいませんか。」

    双葉「しょうがないね、支払いはゴールドカードで頼みます。」
    5万円以上の支払いは、カードリーダーがなく電話で確認するときは承認番号というのをもらわないと受け付けの伝票を清算に回せません。時によっては本人確認のためカード会社が生年月日を聞いてくることもあります。

    山田「ビサカードですか? 承認ナンバーをいただきたいのですが、カードナンバーはXXXXXXXで商品は航空券金額は23万6000円です。」

    カード会社「お客様の生年月日をお聞きになってもらえませんか」

    山田「双葉さんすみませんが生年月日必要なので教えてもらえませんか?」

    双葉「このカードゴールドだよ、そんなもの必要ないだろう、お宅信用してないのかこんな所初めてだぞ。」

    山田「たまに本人確認の意味でカード会社が聞いてくることがあるんですよ、まあ形式ですから申し訳ないですが。」
    渋るお客さんを説得、生年月日を聞き出して本人確認を終わらせ、航空券は出発2週間前くらいに渡すと言うことで納得してもらいました。

     それから10日ほど経ってから、希望の28日も取れ航空券も5月26日には渡せる手はずを整えていたのですが、予定より1時間お客さんが早く来てしまったのです。事務所にはまだ航空券は届いていません。

    双葉「この近所でアポイントがあるので、2時から3時までこの喫茶店にいるから切符を持ってきてよ。」

    山田「一応、事務所に切符が届きましたら電話しますから。」

     切符はやっと3時に到着しました、まあこれでも予定の時間は時間なのですが、他のお客さんの電話とか、届いた切符のコピーやファイルをしてるうちに3時もかなりすぎてしまいました。そうだ、双葉さんに電話をしなくてはと思ってるとき、

    双葉「待ってたのに連絡もなにもないじゃないか、」
    と言いながら双葉さんが事務所に入ってきました。

    山田「いやー、さっき切符が届いたものですから。」

    双葉「いいわけはいいよ、言った通りに持ってくればいいんだよ。」
     勘違いしちゃーいけません、今日ゴールドカードの人なんかはいて捨てるほどいます。そしてほとんどの旅行会社では、少なくとも5〜6回切符を買ってくれた人か、年間10人以上の人を紹介してくれた人以外は、お得意さまとはいいがたいのです。ゴールドカードを持っているのは本人のステイタスであっても、旅行会社の上得意とは行かないのです。

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