トラベルメイト Top page へ戻る

トラベルメイトトラベルメイト95

<<前のページ     次のページ>>

「トラベルメイト95」
  1. 【 海外旅行のガイドブックを見てみると 】

     海外旅行のガイドブックは、通常エピソードを思いつくままに羅列をしたものか、あるいは旅行を構成するいろいろのパーツを統計立てて説明しているかどちらかのものしかありません。

     全くの初心者がガイドブックを参考に、旅行を構成するいろいろのパーツを統計立てて分類してあるものを隅から隅まで何回読んだとしても、実体験がないため書いてあることは誤りのないものであっても理解は非常に困難です。

     エピソード中心のガイドブックはどうでしょう。ほとんどのものがこんなおもしろい話があったよ、こんな信じられない人がいたよ、私はこんなことをしてきたよ、と言うお話で終わっています。旅行のシステムやパーツを理解するためにエピソードを選ぶのでなければ、ただの読み物以上の価値はありません。

     このガイドブックにしても、最初から一つ一つのことが、よく読み込んだからと言って理解できるとは思わないでください。まず、エピソードの部分を読んで、旅行へ行く人はどんなのか、旅行会社とはどんなものなのか、旅行自体実際はどんなものかをおぼろげながらに知ってそれから、色々な部分的な実践の説明を理解始めるわけです。

     今までのガイドブックが理解しにくいものだったのは、エピソードだけのものだったか、実践のパーツの部分の説明だけかに偏っていたからです。エピソードを集めるのは簡単です。旅行業界に数年いればかなりのコネクションといろいろの話が聞けます。慣れてくれば、2、3個の素材から新しいエピソードをつくることだってできます。

     ただ読んで楽しむだけの書斎のトラベラーならば、それでも満足できるかもしれませんが、いったん旅行を始めてしまうとたくさん読んだエピソードも起こりうる可能性のほんの10%にも満たない量だと言うことを思い知らされて愕然とします。後の90%は、エピソードにもならない、おもしろくもない出来事なのですが、一通りそれを体験してないと、次にどうするのがいいのか、次にはどういうことが起こり得るのか、なにも解らない暗闇の中にいる状況と同じ羽目に陥ってしまいます。誰を信用していいのか、こんな場面で人に頼ったり相談したりしていいのか、あるいは自分ですべて処理しなければならないのか、体も頭も固まって思考停止状態になります。

     ましてや初心者ですと、何故旅行に出かけるかという大前提を、彼らなりに持っているのでよけい行動の自由が利かなくなります。こんなはずではない、俺の目的はこんなものではない、なんて今日は馬鹿なことをしてしまったんだろう、もっと現地の人とふれあって文化を体験しなければいけないのに、今日の俺のあるいは私の態度はどうだったんだろう、全く持って醜い日本人ではないか、あんなに嫌だったのに自分がそうだったとは!!!!

     ほとんどの人が、最初手帳の切れ端にこう書き付けるか、書き付けないまでも頭の中が反省の自己嫌悪でいっぱいになってきます。

     こんな青っぽい考えは、歳を重ねたらしないと思う人がいたとしても、ちょっと違う表現で現れるだけです。今日典型的な日本人をみた、若いくせに集団でグッチだとかエルメスのブランドショップのショッピングバックを持って歩道を歩いていた。学生ならもっと他に現地の文化にふれあうような旅行を考えられるのに、前回旅行したときに空港で会った、これからカンボジアにボランティアにゆくと話してくれた、身なりのこざっぱりとしたあの若者達が忘れられない。

     それはあたかも激症肝炎のように自分の体を自分の免疫反応が襲うようなもので、下手すると本当に一歩の所でもうへたってしまいます。最初は面倒なことは考えなくともいいのです。目的を出発前から頭の中に作り、それに少しでも一致しないことは反省の材料にする。頭の中だけの架空の旅行なら悪くはありませんが、現実の世界の旅行なら常にへたな耐震装置が付いた石油ストーブみたいなもので、ちょっとショックが加わると直ぐ止まって本当の実用にはなりません。

     初心者にはもう一つ大変な欠点があります。それは何でも問題を根本的なものに捉えがちなことです。熱が四十度ある時でも、抗生物質はよくないのでこの体にいい野菜ジュースを飲んでがんばったり、熱は体が細菌に対して出している防御反応で全くナチュラルなものだから薬で熱を下げるなどとんでもない、このまま暖かくしてお茶を飲んで汗を流せばきっとよくなると信じ込んでしまいます。

     初心者のころの旅行のコツは一つしかありません。気楽にイージーに肩の力を抜いていい加減にということなのです。とにかく目の前のことを、一番簡単だと思う方法で処理すればひとまず問題は終わりです。明日同じ過ちを繰り返すにしても、とにかく今日の問題は終わったのです。その日暮らしの気楽さが旅行の醍醐味の一つでありますから、能天気に行けばいいのです。

     いくら本を読み込んでも、そこに書いてあるエピソードは実際の10%、旅行をつくっている部品の説明も正しく書いてあっても(勘違いの説明もかなりありますが)実体験のない限り理解不能、しかもその部品は、一個一個30分おきにバラバラに目の前に現れるわけでなく、空港のチェックイン一つを取ってみても30分以内にいろいろの部品が合わさった状態で出現します。最初からうまく旅行することなど不可能なのです。

     それでもガイドブックはもっとも安価で最初に情報を入れるには最適のメディアですから頼らざるを得ません、このガイドブックは本当は旅行はこんなものだし、それを手配してくれる業界はこうだし、旅行者も色々な人がいてと取っつきやすいエピソードから入ります。ある程度これで旅行に対してイメージが少しは持てると思います。その後具体的なパーツの説明に入ります。この時も理解しやすいように、最低限のエピソードを混ぜた形での説明になります。最後には、もっとも初心者が気になり、中級者ではどうでもよくなり、エキスパートはやはり気になる旅行の目的、日本人論などを取り上げます。こうして旅行本来のノウハウとは離れていってしまうのです。

    <<前のページ     次のページ>>

     



↑ページ最上部