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トラベルメイト片山くんが行く

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  1. 【 片山くんが行く(58) 】

     コペンに居着いて3ヶ月以上が経ちました。私達はもういっぱしのコペンっ子になっていました。元々日本でも態度がでかい私達です。ホテルでも最初かぶっていた猫はだんだん剥がれてきました。それなりに仕事をして、それなりにさぼって、まあ要領よくやってました。

     さすがに入門編の皿洗いはもう私達の仕事ではありません。河本は私より見栄えが良い上に、要領が数倍は良いのでウエイターの中堅でがんばっています。私は、マイペースで掃除一般担当です。

     この頃の日本人アルバイトは良い意味での職人気質を持っていました。仕事してるうちにどうしても、調子が出てきてしまうのです。さぼろうとしていても、皿洗い一つにしても早く正確に出来るようなこつと工夫をついついやってしまうのです。

     早く正確に仕事終わったからと行って早く帰れるわけではありません。早く大量に仕事をすれば、その分しっかりさぼる奴がいて、と言うより残ってる仕事に合わせてペースをスローダウンする奴がいて、結局他人が楽するだけで終わってしまいます。

     それどころか、皿を一枚洗おうとして、スポンジにつけて皿を半分擦った所で終業時間が来ると、本当にそのまま皿半分に油汚れ、半分は洗剤、スポンジにも油、皿は就業時間が来たときにあったところに置きっぱなしでロッカールームに駆け込みます。

     皿一枚だろう、ほんの30秒もあれば皿半分をこすって汚れ落として次の行程の水洗いのシンクへ放り込めば済むことなのにと思ってしまいます。最終の水洗いの所でも、数枚皿を重ねて洗い、皿立ての所へ転がすように放り込めば能率は何倍にもなります。それを、一枚一枚丁寧ならまだ良いけどもだるそうにゆっくり洗って、また一枚一枚皿立てにたてていく、「この野郎おととい来やがれ!」と言う感じでいらいらします。

    本当に私達が調子よく皿洗いをすると、一種のリズムが全体に流れ、

    「皿一丁」

    「あいよ皿一丁!」

    ジャブ、キュッキュッ、ジャブ、ジャブ、ピッピッ、カシャンカシャンでもう終わりです。忙しいときも、一気に洗い終わった皿を乾燥のための皿立てに一気に10枚くらい放り込むときの音はなかなかのものでした。

    そう言うときは、シャキキキキーン、カシャカシャの感じです。

     これはイタリアの出稼ぎのオッサンには出来ません。彼ら労働許可証持ってますけども。

     でも不思議なもので、私ら日本人軍団が調子に乗って「ストンプ」状態で仕事を始めるとそれに影響されて仕事が速くなってくるのが必ずいました。日本人の中にも絶対やる気なしの人間の少数ですがいました。(このコペンのホテルは絶対やる気なしの日本人はいませんでしたが)面白いもんです。

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