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田森くんは西へ Index page へ

vol.017 沖縄航路 (2)

 

次の日、目が覚めたのは6時過ぎでした。船は外洋を航海してるらしく大きく揺れながら進んでいます。昨日の夜の不安は一夜開けたらどこかへ消えてしまったようです。

ただ胃の後ろ辺りにはまだ鈍痛が残っていました。食欲はあまりな かったのですが朝飯代も切符の中に含まれています、3人で食堂へ行きました。 和食と洋食が選べたので、胃も重いことだしみそ汁付きの和食のコーナーへ並びました、並んでいる船客ほとんどが昨日の乗船したての元気はありません。ほとんどが青白い顔をして列に並んでいます。  

メニューはご飯にみそ汁、生卵にのり、あじの開きが一匹。上下に大きく揺れる食堂で朝飯とるのは一苦労です。ぐぐっと船があがるときに汁物は一気にのどに流し込みます。固形物は一回目の競り上がりの時に口に入れ、数回のアップ、アンド、ダウンをやり過ごしてせり上がり始めたときに一気に飲み込みます。これがタイミングがずれて下がり始めたときに汁物を飲み込もうとすると、のどを液体が下がる速度と、自分の体が船と一緒に下がる速度との競争になってしまいます。下手するとのどの奥に液体が無重力状態でとどまってしまいます。  

ただでさえペンキの匂いと、床下から一晩中聞こえるエンジンの音でむかむかしてる所へ、液体が無重力状態で喉元にとどまったら、これは大変なことになります。くしゃみして辺りに唾液の匂いをばらまく位のことでは終わりません。  

食堂の皆が無口で、もそもそ口を動かしています。私ら一応半分くらいは食べ終わったのでデッキに出て気分転換することにしました。とても全部食べ終わるだけの食欲はありません。普通ならみそ汁の臭いは食欲を増すはずなのですが、 今はペンキの臭いとコーヒーの臭い、機械油の臭いと混じって胸がむかむかしてきます。  

デッキは小雨模様で風が吹いていました。2月ですからいくら九州沖でも風は寒いです。空気は船内と違ってすごく新鮮です。私はセーターにウインドウヤッケGパンですから少々の寒さには耐えられます。田島も同じような格好でしたが、中島は暖かい台湾に旅行するというので半袖シャツしか持ってきていません。

「さむいな。俺下へ行くわ」  

そういって中島は船室に降りていきました。デッキにいるのは私ら以外には5、6人です。海は雲が海面までたれ込めて視界は500mくらいと言うところです。  

田島とは下宿の仲間の中でも仲がいい方ではありませんでした。彼は高校卒業 してから一回社会人になり数年後に学生になった苦労人でしたから、年も私より4年ほど食ってました。話しも興味もかみ合わないのですから仕方ありません。 まあでも一人で旅行するよりは数倍心強いのですからお互いメリットと言えばメリットがあったわけです。万博時代のアルバイトの話を少ししたところで、彼は寒いからと言って下に降りてゆきました。

相変わらず、船は揺れ続けています。1時間ほど外にいたでしょうか、デッキにいても景色がいいわけではなく新鮮な空気があるだけなので少々飽きてきました。ちょっと昼寝には早いですが、船室で寝ることにしました。先に降りていった2人とも寝袋にくるまってもう寝ています。私も仲間にはいることにしました。