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病の細道

 

第28回 コーチ (2002/01/21)

 

おとといの糖尿病教室もそうだが、病院ではいろいろなアドバイスや生活指導をうける。もちろんそれは検証され有効なことが確認された定説にもとずいておこなわれている。どの理論も講義としては理解できる。

だが、例えば、学校の英語の授業が理解できたからといってすぐに英語が使えるようになるわけではない。誰だってそれなりの訓練が必要だ。問題は、訓練方法にはさまざまあって人によって最適の方法が異なることだ。歌の歌詞や映画で身につける人もいれば、読書が向いている人もいる。ア
メリカに1年住んでできるようになる人もいれば何年住んでも全然ダメな人もいる。

パソコンも同様だ。ちょっと教えただけでどんどんできるようになる人もいる。メールのやりとりをひとつ覚えるとおもしろくなってパソコンをモノにしてしまったり、ゲームがきっかけだったりする。自分の場合はプログラミングに興味を持ってハマった。反対に何度教えても身につかない人もいる。理屈がわかっても、頭と手が自然とうごかない。できないからヤになる。ヤになるからやらなくなる。

ことほど左様に理解することと身に付けることとは別なのだ。
糖尿病教室の授業を理解することとそれを自分のものとすることは別なのだ。何となく苦労しないで英語ができるようになる人がいるように、たいして苦もなく生活指導を実践できる人もいるのかもしれない。しかし自分にはそんな幸運はない。そもそも簡単にできれていれば病気になっていなかったかもしれない。

こうして考えると、本当に必要なのは、講義をしてくれる講師や専門家ではなく、実践のアドバイスをしてくれるコーチではないか、と思う。例えばオリンピックを目指すようなアスリートにはかならずコーチがいる。選手は、自分のことを理解し、自分に最も適した練習方法や工夫をアドバイスしてくれるコーチを必要としている。

優秀なコーチはひとつのやりかたをすべての選手に適用するのではなく、選手ひとりひとりの個性や考え方、目標をふまえて別々のメニューをつくる。同じ練習をしても効果のある人とない人がいることを知っている。ほめることで伸びる人もいる。けなすことで反発し伸びる人もいる。それも知っている。

同様に、生活指導においても、理想的な生活様式というものをあらかじめ用意しておいてその枠に押し込めようとするのではなく、その人にもともとある生活習慣をベースにしてどこをどのように改善したらよいかをアドバイスすることが必要なのではないか。

旅行が生きがいの人に、厳格な食事を守るために食事の乱れる旅に行くなというのは簡単だが、生きがいを奪ってしまうような指導ではイヤになるだけだ。今の体調では無理だが時期がきたらこうゆうふうに工夫して行ってみたらどうだろう、といってサポートしてほしい。

一般論ばかりしゃべる専門家や担当がかわるたびにいちいち最初から説明しなくてはならないような電話相談ではなく、こちらの事情を知り継続的にその時々に適切な情報やアドバイスをしてくれる人。ただ糖尿病を熟知している専門家よりも、自分のことも糖尿病のこともそれなりにわかっているOne To Oneのサポートコーチが隣にいてほしいと思う。


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