[vol.16]
8月11日(水)旭川〜音威子府〜稚内

今日も快晴。このところ北海道では異常気象で暑く、各地で30度を超えている。鉄道の線路が曲がるほどで保守がたいへんらしい。ヒッチハイクには暑いのはつらいが、景色が青空に映えるのはいい。木の葉はみずみずしく輝き、草の緑もふかい。短い北海道の夏をめいっぱい楽しむ若い女性達の姿が印象的だ。

旭川駅からバスで郊外まで出た。40号線で稚内まで250K。最初に止まった車は、稚内に行くというとこの道は北見に行く道だからあっちへ行けと別の道を指差す。GPSまで積んでいるばかりか地元の人のようでどうもカラカイらしい。たまにこういう人もいる。ヒッチハイカーが嫌いなのかもしれない。

次に止まってくれた車は真新しいキャンピングカーだった。入り口には土足厳禁と書かれている。流し台や冷蔵庫、テレビ、食卓などがそろっている。上のパネルにはたくさんのスイッチ類が並び電源コンセントもある。旭川に住む50代のご夫婦はこれからの人生この車であちこちに行くつもりらしい。今日は120K先の音威子府(おといねっぷ)にソバを食べに行くという。ソバで120Kかと感心していると実は昔勤めた小学校をたずねるのが目的らしかった。

途中、和寒、士別、風連、名寄を通過。北海道の地名はいい名前が多い。このあたりは手塩川を中心に広大な畑がつずいている。ゆっくりとした起伏の連なる丘にはジャガイモやアスパラ、米、モロコシ、ソバなど多彩な作物が栽培されている。牧場などもみえるがあまり多くはない。

音威子府のソバは殻まで一緒に挽いたもので黒い色をしている。ここの名物らしい。小さな街で特別のソバ屋があるわけではない。駅とドライブインにソバの店がはいっているだけだ。駅のソバ屋はいわゆる立ち食いスタイル。人も少ないのでこれで十分なのだろう。しかし旭川から120Kも来て食べるというからもっとおおげさなところかと想像していたので拍子抜けした。ソバはそこそこの味だがとりたてておいしいというわけでもなかった。

手塩川を歩いて渡った。さすがに北海道第2の川だけある。川幅は広く流量もおおい。河岸は段丘になっていて、それを利用して牧草が育てられている。こんな北まで来ても日影のない道を歩くのはつらい。橋をわたりおえたところでヒッチ再開。それにしても車が少ない。数分に1台程度。でもこうした条件はドライバーも余裕をもって走っているので案外とまってくれる。

このさき大きな町はないのでいっきに稚内にいけるかもしれないと期待していたらそのとうりになった。大坂のひとでいまは仕事の関係で3年前から稚内に住んでいるという。新住民らしく稚内の良さをいろいろ解説してくれる。とりわけたべものに関してはうんちくが深い。車は100Kを超すスピードで疾走する。信号がないので高速道路と同じだ。

あいずちをうちながら外の風景にみとれていた。ここまでくると原野と牧草地だけで畑はほとんどない。サロベツ原野の向こうに利尻富士が見えてきた。稚内の市街に入ると北に来た感じが強くする。最北の町へようこそとかかれた塔をみたときやっとここまで着いたと少し力が抜けた。

駅を過ぎ、観光名所稚内公園を案内してもらった。パンフレットの定番氷雪の門や九人の乙女の碑などがある。高台からは宗谷岬を背景に美しい海岸線と町並みがみわたせる。たまにサハリンも姿をみせるらしい。丘を下りてノシャプ岬へ。海の向こうに利尻富士がそびえ、夕日がまぶしい。昆布漁の魚場が続く。着岸しやすいようにとがった舳先を上に向けた昆布舟の姿がおもしろい。

有名な防波堤ドームで降ろしてもらった。400mつぐく独特のドームは中世の城壁のようでもあり美しいアーチをしている。中ではお祭りが開かれ、海産物の店がならんでいる。ニシン、タラ、サケ、毛がに、ウニ、ホタテ何でもある。奥にはバーベキューコナーがあり、買った魚貝類を焼いて食べられる。 タコ、イカ、タラバのほかでかいホッキ貝を食べた。ホッキ貝2個半で腹がいっぱいになった。

駅へいき宿をさがしてあちこち電話してみたがシーズンでどこも満杯。電話ボックスを出て駅横をみると、さいはて旅館の看板があった。名前が気にいってはいると空き部屋があった。宿探しとはこんなものだ。夜、しじみラーメンを食べた。天塩川の河口ではしじみが採れるようだ。大き目のしじみはラーメンによく合う。スープがうまい。

Copyright(C)1999 小島春彦